創作欄 「15歳の神話」
ロミオとジュリエットではないが、相思相愛の男女関係はある意味で、運命的な出会いであるかもしれない。
それは相性の問題でもある。
高校生の徹と大学生の浩が空き地でキャッチボールを始めると中学生の少女が赤ちゃんを抱いて路地裏から現れた。
少女はポニテールの髪型をしていた。
いわゆる美少女の類型の整って顔立ちである。
徹は小学生の頃、東京・大田区の田園調布で育ったが、大邸宅に住む少女、少年たちには気品が備わっていた。
そして少女や少年たちの美しい母親たちは、揃って着物姿で授業参観に来てきた。
徹は美しい母親たちの容姿に子どもながら強く心を惹かれて、同級生たちを羨んだ。
徹は中学生の少女を初めて見た時、小学生の頃の記憶が鮮明なまでに蘇った。
少女は徹と浩のキャッチボールが始まると待っていたように、赤ちゃんを抱いて現れた。
「あの子は徹に気があるんじゃないか」
浩は銭湯の湯船に浸かりながら言った。
手拭を頭に乗せている浩は、俳優の石原裕次郎に容貌が似ていた。
「浩さんは女の子にもてるでしょうね?」徹は聞いた。
「まあな、でもな、あの子は徹に気があるな」
浩は頭に乗せた手拭を湯船に沈めて、顔を拭った。
「そうだろうか?!」徹は半信半疑であった。
「あの子に聞いてみるか?」と浩は八重歯を見せてニヤリと笑った。
「よして下さいよ」徹は慌てた。
少女の一家は半年前に徹の自宅の裏に引っ越してきた。
少女の父親は顎鬚をはやし、精悍そうな大きな目をしていた。
昭和30年代の東京・世田谷の用賀町には畑があり、雑木林もある新興住宅であった。
「おばさん、裏の一家はどんな人たちなの」下宿人である浩が徹の母親に聞いた。
「ここだけの話だけど、訳ありだね」
「訳あり?」浩の大きな目が見開かれた。
徹の母親は声を落として事情を説明した。
「旦那と奥さんは、年が離れているだろう。再婚らしいんだ。中学生の娘さんと小学生の娘さんが先妻の子、赤ちゃんは奥さんの子なの」
「なるほど」浩はうなずきながらタバコを口にくわえた。
少女の40代の父親と20代と思われる継母は手をつないで、二子多摩川の河原を散歩していた。
徹と浩は多摩川で魚釣りをしていて、二人の姿を見かけたのだ。
それから半年が過ぎて、画家である少女の父親が、娘をモデルに描いた絵が評判となった。少女の裸体の油絵であり、「15歳の神話」と題されていた。










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