連載 「深化する60代」 続編 (1) 山本嗣信
「マニュアルどおりに話すのではなく、自分なりのやり方できちんと伝えることが大切。
新聞は、その良いトレーニングになります。
棒読みではなく、記事の背景を考えた上で、自分の考えを持ち、それを人に話す。
社会人になってからも、そのやり方は通用します」
伊藤忠商事人事部採用・人材開発室長徳島操さん。
「社会へ出るとは、異質なものを理解するということ。情報収集も「自分基準」ではなく「社会基準」となる。
だから新聞は重宝されるのです。
新聞は多様なニュースを掲載し、見出しの大きさによってニュースの価値付けをしている。
「読みたい記事」ではく「読むべき記事」が瞬時に分かる。
実は、価値付けのされていない情報洪水から、ネット経由で外の世界を取りこめる人は、相当の情報プロです。
新聞ほど簡単な情報収集ツールはないのです」
読売新聞人事部次長原田デスク。
「大学へ行かなくとも、新聞を角から角まで読めば、大学卒と同程度の教養は身につけられる」
その人の言葉に納得して新聞を読み出したのが、24歳の時。
非常に遅かったのである。
ある会社の面接を受けた時、「社会的な知識が不足している」と指摘された。
「君は、新聞をあまり読んでいないね」
ズバリと言われてしまった。
映画、芸能、詩歌、文芸欄などを読み、他の紙面を無視していた。
そして、スクラップ帳には好みの記事だけを挟み込んでいた。
「日経新聞、朝日、読売、最低3紙くらいは毎日、目を通すのだ。百科事典のセールスで君は、何を学んだんだ?」
京都帝国大学卒の広瀬社長に訓示された。
東京・千代田区平川町の都市センタービルの地下1階に公益事業新聞社があった。
社の陣容は、社長と社長の秘書兼経理担当の女性(日本大学卒)、記者3人、営業マン1人。
この営業マンは、真冬にワイシャツ姿で出社した。
「大野君、その姿は何だ?!」
広瀬社長が老眼鏡を外して睨みつける。
「実は、上着は質屋に入れました」
「バカ者! いくらで質屋へ入れたんだ!」
「5000円ですが・・・」
ずれ落ちたメガネをつまみながら言う。
「ワイシャツ姿で、営業できると思っておるのか。直ぐに上着を出してくるんだ」
秘書は金庫から1万円札を出しながら、「前借よ。いいわね」と軽蔑の眼で言う。
私は、約1年務めた東京学英社にも半端ではない、とんでもない人物がいたが、この社にも居るのか、と呆れ返る。










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