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渡辺 慶明
株式会社インサイト代表取締役。慶應義塾大学法学部卒。趣味はフライフィッシング。
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2008年5 月16日 (金)

歯科医院の競争戦略・・・新規参入障壁

マイケルポーターの競争戦略に照らし合わせて、歯科医院の競争戦略を考えてみました。

以下の5つの競争要因から自院の戦略を立案するの基本戦略となりますが、今回は特に<新規歯科医院の参入の脅威>を考えてみたいと思います。  

1 新規(歯科医院)参入の脅威 

2 既存業者(歯科医院)間の敵対関係の強さ 

3 代替品(治療に行く必要がなくなるような薬の開発等)の脅威 

4 買い手(患者)の交渉力 

 

<新規歯科医院の参入の脅威> 

歯科医院を開設して、しばらくして患者さんが増えてくると必ずと言っていい
ほど近くに歯科医院が出来ます。

この新規参入が起こるということは、マイケルポータが指摘するように「生産
(治療)キャパシティーが増え、一定の市場シェアを確保したいという意欲が
発生し、しばしばかなりの経営資源(対応策)が投入される」という理由により
ます。 

その結果、「価格(患者数)が低下するか、既存の企業(歯科医院)のコスト
が高騰する」ことになります。 

 

つまり、1医院あたりの患者数が減るか、高いサービスを提供するためにより良
い材料や人材を必要とするため、コストが高騰するわけです。 

また「新規参入の脅威」は、その市場への参入障壁がどの程度であるかによって
異なってきます。 

あきらかに周囲の競合医院に負けるとわかっている場所に、歯科医院を開設することはしない訳ですから、新しく医院を出そうと思っている側にとって、何らかの参入障壁があるかないかが大きな要因となるわけです。 

ポーターはその参入障壁を6つに分けています。 

 

1 規模の経済性 

これは、一定期間内の生産絶対量(絶対治療数)が増えるほど、一処置あたりのコストが低下する事を意味します。ですから、規模の経済性がまかりとおる業界であれば、新規参入業者ははじめから大量生産(大規模医院)に踏み切らざるを得ないということになります。

しかし、歯科院ではおわかりのように治療数が増えたからといって、一処置あたりのコストが極端に下がることはありません。もちろん、患者数が増えれば採算面からいって従業員1名あたりの生産性は向上するかもしれませんが、それでも限界があります。したがって、この参入障壁は歯科医療に関してはないと言ってもいいことになります。

 

2 製品(治療内容サービス)の差別化 

差別化とは「過去からの宣伝、顧客サービス、治療内容の差異等で既存医院の
ブランド認知が高く、顧客の忠実度を勝ち得ている」ことを言います。

歯科医院を考えてみると差別化は保険診療を主体にする以上、実際のところ非常に難しいといえます。もちろん、認知度はある程度あるとは思いますが、ブランドというほど差別化されている医院は少ないと思います。ですから、この点でも歯科医院の参入障壁は低いと言えるわけです。 

3 巨額の投資 

一般病院にくらべ歯科医院は明らかに投資額が小さく、融資が厳しくなった今日でも個人で調達できますから、参入障壁はないと言えます。 

4 仕入先をかえるコスト 

歯科医院における、仕入先は材料店と技工所ということになりますが、これも必要に応じて、変更することは簡単ですから、参入障壁は低いことになります。

5 規模とは無関係なコスト面での不利 

A)独占的な製品・テクノロジー(周りの医院ではやっていない治療) 

B)原材料(スタッフや代診)が有利に入手できる 

C)立地に恵まれている 

D)政府の助成金 

E)習熟による効率性 

歯科医院では、A~Eのうち、B・C・Eが参入障壁にはなり得ます。 

つまり、新規の医院が開業を考えた場合に B)のケースでは、競合医院がスタッフや代診を大学ルートなどを活用して、非常に有利に採用でき、かつそのスタッフや代診が育つ仕組みを持っていると判断した場合には、その場所での開業を断念する場合があるということです。 

C)のケースでは、明らかに立地的に有利な医院に対抗することが難しいと判断
した場合には、参入を取りやめる可能性があるということです。 

E)のケースですが、競争相手の医院の習熟性が高いどうかを事前に判断することは、まれなだと思いますが、有名な大御所の先生ならば新規参入者はあきらめることが考えられます。 

6 政府や関係団体の政策 

これは、本来、歯科医院の開設の条件等を政府がコントロールする事によって参入障壁を築くということですが、歯科医院で考えた場合には、歯科医師会といった任意団体による参入規制がこれにあたるといえるでしょう。

開業情報を歯科医師会が事前に入手した場合に、開業する先生に様々な圧力をかけて開業を断念させる場合がこれにあたります。

しかし、最近は歯科医師会の公正競争の問題などもあり、現実的に開業を阻止できるということは非常に少なくなっていると思います。

こうして新規参入に関する「参入障壁」を考えてみると、歯科医院に関しては他業界に比べ、その参入障壁は低いと言わざるを得ない状況にあるのが実状なのです。

この結果、年間の新規開業数は約2,000件~2,500件と一定の水準を維持してるわけです。


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